ミラー交換でのドレスアップは注意が必要

バイクのミラー

ミラーの面積や形状に関するルール

バイクのバックミラーを交換することは、愛車の雰囲気を大きく変えることができる手軽なカスタムとして人気があります。しかし、ミラーは後方の安全確認を行うための重要な保安部品であるため、法律によって厳しい基準が定められています。デザインだけで選んでしまうと、いざ取り付けたときに車検に通らなかったり、警察の取り締まりの対象になってしまったりする可能性があります。まず押さえておきたいのが、鏡面のサイズに関するルールです。

保安基準では、ミラーの鏡面の面積は69平方センチメートル以上でなければならないと決められています。これは円形であっても四角形であっても変わりません。あまりに小さな極小ミラーなどは、この面積の基準を満たしていないことが多いため注意が必要です。さらに形状ごとの詳細なサイズ規定もあります。一般的な円形のミラーの場合、鏡面の直径が94ミリメートル以上、150ミリメートル以下である必要があります。つまり、小さすぎても大きすぎてもいけません。

円形以外のミラー、例えば楕円形や長方形、多角形のミラーの場合はどうでしょうか。この場合は、鏡面の大きさが120ミリメートル×200ミリメートル未満であり、なおかつその中に直径78ミリメートルの円を隠すことができるサイズでなければなりません。少し複雑に聞こえるかもしれませんが、要するに極端に細長い形状で鏡面の面積を稼いでいたとしても、直径78ミリメートルの円が入るだけの幅がなければ認められないということです。これらの基準は年式によって適用される範囲が異なりますが、これから新品のミラーを購入して交換するのであれば、最も厳しい現行の基準(新保安基準)に適合している製品を選んでおけば間違いありません。バイク用品店で販売されている信頼できるメーカーの製品には、パッケージに「新保安基準適合」や「車検対応」といった表記がなされています。ネット通販などで安価な海外製のノーブランド品を購入する際は、これらのサイズ基準を満たしていないファッション重視の商品も混ざっているため、購入前によく確認することが大切です。

衝撃を吸収する構造でなければならない

ミラーのカスタムで見落としがちなもう一つの重要なポイントが、衝撃を吸収する構造であるかどうかです。これは歩行者と接触した際の安全性を考慮したもので、万が一バイクのミラーが歩行者の体に当たってしまったときに、ミラー自体が動いたり回転したりすることで衝撃を逃がし、相手に大きな怪我をさせないようにするための決まりです。

具体的には、歩行者などに接触した場合に衝撃を緩衝できる構造であることが求められます。純正のミラーを手で強く押すと、根元から回ったり、可動部が動いたりするのはこのためです。カスタム用のミラーを選ぶ際も、この機能が備わっているかを確認する必要があります。例えば、可動部が固着して動かないように溶接されているものや、鋭利な装飾が施されているものは保安基準に適合しません。

この衝撃緩和の構造を実現するために、ヤマハ車などを中心に採用されているのが「逆ネジ」という仕組みです。右側のミラーの取り付けネジを反時計回りに締める逆ネジにすることで、前方から衝撃が加わった際にネジが緩む方向に回転し、衝撃を受け流すことができます。また、正ネジのミラーであっても、取り付け部分に「ターナー」と呼ばれる衝撃緩衝装置やアダプターを介して取り付けることで基準を満たすことができます。

古い年式のバイクであればこの基準が適用されないケースもありますが、安全性の観点からは、年式に関わらず衝撃緩和機能を持ったミラーを装着することが推奨されます。特に最近のスタイリッシュな社外品ミラーの中には、デザインを優先して可動域を制限しているものや、アダプターを使用せずに直付けするタイプのものもあります。取り付ける際には、単に固定できれば良いというわけではなく、いざという時にクルッと回って衝撃を逃がせるようになっているか、あるいは専用のアダプターが必要ないかを必ずチェックしましょう。この機能がないと車検に通らないだけでなく、万が一の事故の際に自分自身の加害責任が重くなってしまうリスクもあります。

視認性の確保と車幅への配慮

法的な基準をクリアすることも大切ですが、ミラー本来の役割である「後方の見やすさ」を犠牲にしてはいけません。カスタムミラーの中には、鏡面が小さすぎて後方がほとんど見えなかったり、アームが短すぎて自分の腕や肩ばかりが映り込んでしまったりするものがあります。特にハンドル周りをすっきり見せたいという理由で、極端に低い位置に取り付けるショートステーのミラーや、ハンドルの下側にマウントするアンダーミラーを選ぶ場合は注意が必要です。

視認性が悪いと、車線変更や右左折の際に目視確認の時間が長くなり、前方不注意の原因になります。また、後続車の接近に気づくのが遅れ、追突される危険性も高まります。防眩鏡と呼ばれる、後続車のヘッドライトの眩しさを軽減する色付きのミラーもありますが、夜間の視認性が落ちてしまうほど色が濃いものは避けたほうが無難です。自分の乗車姿勢や体格に合わせて、無理なく後方が確認できる位置に調整できるミラーを選びましょう。

また、取り付け位置に関してもルールがあります。ミラーの中心がハンドルの中心から280ミリメートル以上外側になければならないという規定や、バイクの全幅から250ミリメートル以上飛び出してはいけないという規定が存在します。すり抜けを頻繁に行うライダーの中には、ミラーが車のサイドミラーと接触するのを嫌って内側に追い込んだり、幅の狭いミラーに変えたりする人もいますが、あまりに内側に寄せすぎると後方が見えなくなるだけでなく、保安基準違反になる可能性があります。逆に、純正よりも横に大きく張り出すようなデザインのミラーを取り付けると、車検証に記載されている車幅が変わってしまい、構造変更の手続きが必要になるケースもあります。

ミラー交換はドライバーなどの基本的な工具があれば誰でも挑戦できる簡単なカスタムですが、そこには「サイズ」「衝撃緩和」「取り付け位置」という多くのルールが存在します。かっこよさを追求するあまり、安全性や法適合性を疎かにしてしまっては本末転倒です。パッケージの「車検対応」の文字を確認し、実際に取り付けた後にしっかりと後方が見えるように調整を行ってから公道を走るようにしましょう。たかがミラーと思わずに、安全に関わる重要なパーツであることを意識して選ぶことが大切です。