安全装置「ABS」義務化の背景

ABS

2018年1月から、安全装置「ABS」装着の義務化が始まりました。

排ガス規制(ユーロ)に比べるとあまり大々的に公表されることはありませんでしたが、この機構が追加されることによってバイクの値段が高くなったり、重さが増したりすることもあってライダーとしては目が離せないニュースです。

こちらでは、義務化に至った背景についてまとめます。

ABS/CBS義務化の概要

バイクの新車には、ABS(原付であればCBSも可能)の搭載が義務となりました。なお継続生産車や輸入車などへの適用は、2021年10月から。原付一種(50cc以下)とオフロード競技用車は例外となります。

要するに、公道でそれなりのスピードが出せるマシンのみに適用されるということです。

ABSの機能を簡単にオン・オフ切り替えができるスイッチもありますが、基本的にABSオンオフ切り替えスイッチは一部の車種を除きNGです。

ABS/CBSを装着する効果

ABS(アンチロック・ブレーキシステム)とは、平たく言えばブレーキをかけたときに車輪がいきなり止まらないよう制御する装置のこと。自動車でいうところの「ポンピングブレーキ」を制御する機構です。ポンピングブレーキはブレーキを強めたり緩めたりを繰り返すことで制御距離を短くしたりハンドル操作を容易にしたりするためのテクニックです。

ブレーキを強くかけてしまってもいきなりタイヤの回転が止まることはないので安定性が増し、転倒したりバイクから振り落とされたりと言った危険性が大幅に下がるわけです。雨の日には特に、勢いよくブレーキをかけてしまうと急にタイヤがロックされるのでスリップの危険性が跳ね上がりますが、ABSを搭載していればスリップを回避できる可能性が上がります。

ABSは自動車にはすでに搭載されて久しい技術ですが、バイクに載せるには大きいうえに重すぎるために見送りとなっていました。さらにいうなら、バイクのブレーキングには力加減やタイミングなどが自動車よりもシビアでであり、自動車と同様のABSを搭載してしまうとブレーキのかけ方を誤ると車体が上下してかえって危険だったため、自動車よりも精度の高いABSが必要でした。自動車では「ハンドル制御ができるように」、バイクでは「転倒しないために」ABSが役立ちます。ABSがサポートする範囲がそもそも違うという事情もあったのです。

ABSの小型化と制御技術の向上、双方が叶ったためにバイクへの搭載義務化が進められました。

ABS搭載車が必ずしも安全とは言えませんが、スピードを出しているとかえって制動距離が長くなって思ったように止まれなくなるケースもあります。必ず転倒を防止してくれるものではなく、あくまで安全をサポートしてくれるものだと理解して、引き続き安全運転を行いましょう。

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